エテルナってどんなフィルムシミュレーションなのー?
こんな疑問にお答えいたします。
こちらの記事では、FUJIFILMのカメラ機能であるフィルムシミュレーション『エテルナ』について解説しております。
記事を読んで分かることはコチラ。
- エテルナの色味の詳しい特徴
- スタンダード(プロビア)との比較
- どんなシーンにふさわしい色味なのか
写真用のフィルムシミュレーションとは異なり、映画用フィルムの色味を研究して作られたのがエテルナです。
一般的なスチルカメラにはない、FUJIFILM独自のこだわりが詰まったエテルナのことがよく分かる内容となっております。
記事の後半にはエテルナで撮影した作例写真を多数ご用意しておりますので、ぜひ最後までご覧下さい。
そーいち
- FUJIFILMのカメラを愛用&大好き
- 関西の観光地での写真を撮ることが趣味
- カメラの気になる疑問を解決するブログをやってます
はじめに
本記事の内容は、富士フイルムの色味について徹底解説してる本「FUJIFILM 画質完全読本」と公式の開発者インタビューなどを徹底的にリサーチした上で記事にまとめています。
個人的な意見を述べている項目を除き、公式の見解に沿った情報となっております。
フィルムシミュレーションについて
フイルムシミュレーションがすごいのは分かるけど、どういうものかって調べても中々分からないですよね。
私も昔はそうでした。結局どう使い分ければいいか分かりづらい、、、
そんな経験があるので、富士フイルムの色味の特徴とフィルムシミュレーションのことを分かりやすく紹介した記事を作りました。
こちらも合わせてご覧ください。
エテルナとは?
こちらではエテルナについて詳しくご紹介。
フィルムシミュレーションの図
各フィルムシミュレーションの特長は?
富士フイルムの公式サイトにあるフィルムシミュレーションの相関図です。
- Tonality(トーナリティ)=色調
- 色調とは、明暗、濃淡のこと。コントラスト。
- Saturation(サチュレーション)=彩度
- 彩度とは色の淡さ、濃さのこと。
公式の図は英語なのでちょいとややこしいこもですが、縦軸がコントラスト、横軸が彩度のことです。
この図から分かるエテルナの特徴はこちら。
- 『低彩度』
- 『低コントラスト』
ここから読み解くエテルナの特徴は『あっさりとした色再現』となります。
そんなエテルナがどんな色味なのかをご紹介いたしたす。
エテルナは映画用フィルムがベースの色味
フィルムシミュレーションのエテルナは、映画用フィルム『ETERNA(エテルナ)』をベースに作られた色再現です。
写真用フィルムは彩度やトーンが高めな傾向に対して、映画用のフィルムは彩度とトーンともに非常に低いです。
映画用のフィルムが低彩度、低コントラストの理由はこちら。
- 台詞・演技・音楽などの邪魔をしないため
- 映像が目立ちすぎないようにするため
- 黒つぶれ&白飛びを防いで豊富なトーンを得るため
つまり、映画の内容を最大限に引き立てるために映画用のフィルムがあるのです。
そして、フィルムシミュレーションのエテルナは、映画用フィルムのエテルナで撮影された映画を参考にしており、徹底的にこだわって再現された渾身の色再現なのです。
スタンダードとの比較
お次にエテルナとスタンダード(プロビア)の色味を比較してみます。
まずはこちらの写真をご覧ください。
X-H2S / SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary
プロビアと比べると、全体的にあっさりとした色味とコントラストであることが分かります。
これは映画の内容を邪魔しない画質を表現した結果。
デジタル全盛の時代においては、高彩度&高コントラストの方が写真映えして見えます。
しかし、エテルナの場合は引き算の美学。映画用フィルムの色味がベースですが、スチルの表現でも全然使えます。
お次はそれぞれの色味を比較していきます。
レッド系
X-H2S / VOIGTLANDER NOKTON 35mm F1.2
レッド系の色味は目に見えて彩度が低くて渋みのある色味となります。
プロビアなどの発色がはっきりしているフィルムシミュレーションは赤の主張が強いです。
対してエテルナは全体に馴染むような発色傾向です。
イエロー系
X-H2S / SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary
レッド系同様、イエローも優しい印象の色味になります。
コントラストが低い影響もありますが、ソフトフィルターをつけたような柔らかい表現になります。
グリーン系
X-H2S / VOIGTLANDER NOKTON 35mm F1.2
グリーン系は彩度が落ちることで、地面の土の色とのコントラストがなくなり、よりあっさりとした軟調な雰囲気になります。
色自体は忠実な発色なので、全体的に優しい雰囲気です。
ブルー系
X-H2 / SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary
記憶色系でマゼンダがかったプロビアに対して、エテルナの空色はシアン寄りでくすみがかった渋みのある発色です。
また、やや露出がアンダーに見えるくらいの雰囲気です。
空の色は白飛びがしやすいので、空色を軟調にすることで豊かなトーンを得ています。
エテルナの写りの特徴
お次はエテルナ全体の写りの特徴をご紹介。
主な特徴はこちら。
- 映画用フィルムを再現した低彩度&最軟調
- スチルとは異なる映画表現の色味
- どんなシーンも映画的な情景に
これらの特徴を深掘りしてまいります。
映画用フィルムを再現した低彩度&最軟調
エテルナは映画用フィルムをベースにしたフィルムシミュレーションなので、低彩度&最軟調の絵作りが特徴です。
それぞれの特徴はこちら。
- 低彩度=映画の演技やセリフ、音楽の邪魔にならないあっさりとした色表現
- 軟調=黒つぶれや白飛びを防ぐため
あくまでも主役は映画の内容なので、映画が際立つような色味とコントラストに調節されています。
昔のフィルム映画を見るとよく分かるのですが、写真のように黒をビシッと引き締めてはおらず、画面全体に情報があるのが分かります。
Nuovo Cinema Paradiso |Tema d’amore|Partitura e Parti Singole
こちらは1988年のイタリアのフィルム映画『ニューシネマパラダイス』のワンシーンです。
昼間の日が高い時間帯で、直射日光によりかなり明暗さの激しいはずです。
もしこれが写真用のフィルムなら影になっている顔や左側の崖は黒つぶれをしているでしょう。
しかし、軟調フィルムのおかげで絵全体に破綻がありません。
では、フィルムシミュレーションの中で、エテルナと対局にある高彩度&高コントラストのベルビアと比較してみます。
X-H2S / SIGMA 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary
この比較を見ても分かる通り、エテルナは暗い部分でもシャドウが潰れることがありません。
つまり、夏のカンカン照りの昼間でも、エテルナを使えばこの映画のように絵として成立しやすいのが大きな特徴です。
他のフィルムシミュレーションなら光を探さなければならないシーンでも、エテルナなら比較的シーンを選ばずに写真を撮れます。
スチルとは異なる映画表現の色味
エテルナの色再現には、スチルにはない映画独特の色表現があります。
プロビアであればイキイキとした発色なので元気な雰囲気の写真になります。対してエテルナはしんみりとした情緒的な写真に仕上がります。
イメージとしては絵画の表現に近いかもしれません。次の絵画をご覧ください。
こちらの絵画は、写実的で誰がどこにいて何をしているかがはっきりとしています。
人から背景まで忠実に描かれていて、色味もリアルです。
対して次は印象派と呼ばれる絵画です。
有名なモネの『印象、日の出』です。
同じ絵画ですが、モネの絵の方は軟調で低彩度、加えて優しく情緒的です。
2枚の絵を比べて分かることは、彩度が低くてコントラストが低いと落ち着いた雰囲気の良さが際立つということ。
写真でも同じことが言えて、柔らかい写りは人の心に訴えかけるような絵作りになります。
モネの絵ほど抽象的ではないのですが、柔らかくて軟調なエテルナには情緒的な映画的表現が特徴的です。
どんなシーンも映画的な情景に
エテルナはどんなシーンでも映画のような情景で撮影できます。
映画といえば結構派手な色味を想像するかもしれませんが、シーンごとに切り抜いてみると意外とあっさりしています。
多くの人が知っているであろう、ハリーポッターのワンシーンを切り抜いたものをご覧ください。
Harry Potter Filming Locations in the Forest of Dean and Wye Valley
ハリーポッター 死の秘宝のワンシーンです。
かなり彩度が低くてあっさりとしています。
映画的な表現とは意外とあっさりしているので、エテルナを使うと簡単に情景的な効果を得ることができます。
人の感情に訴えかけるような絵作りならエテルナを使用しましょう。
エテルナはアレンジが面白い
エテルナはFUJIFILMのカメラの画質設定による調節が非常に面白いです。
例えばこんな感じでアレンジができます。
- フィルム感の出るノイズ
- 彩度アップでカラーグレーディングしたような写真に
エテルナは比較的薄味に仕上げられているので、写真にいろんな効果をかけてもくどい表現にはなりづらいです。
そんなエテルナのおすすめアレンジをご紹介。
フィルム感の出るノイズ
エテルナにノイズを加えることで、一気にフィルム感が増します。
『グレインエフェクト=強』『粒度=大』でざらざら感を追加しても、絵作りがあっさりとしているのでやり過ぎ感がほとんどありません。
撮って出しで雰囲気のある写真を目指すならノイズを足してみてください。
彩度アップでカラーグレーディングしたような写真に
こちらはエテルナでカラーを『+3』に設定した作例です。
一気にデジタルっぽい絵作りに変化しました。
ただし、コントラストは低いままで比較的クセのない色再現のため、やりすぎ感はほとんどないでしょう。
エテルナをSNS映えする写真に仕上げるのであれば、カラーを+2以上で設定してみてください。
エテルナの撮って出し作例
こちらではエテルナを使用した作例写真のご紹介をいたします。(水平垂直と、白飛び&黒つぶれの補正を行っております。あらかじめご了承下さい)
まずは曇りの日の写真です。
作例ではかなりあっさりとしていて、どこか情緒的な雰囲気です。
色の誇張がなくて記録色に近いような発色なので、落ち着いた絵になります。
こちらはシャドウが厳しいであろう作例です。
こちらは露出の調整を行なっていませんが、絵の中で黒つぶれはほとんどありません。
1枚目は手前の松が、2枚目は黒猫が黒つぶれしそうなところですが、エテルナの軟調な写りで破綻のない仕上がりです。
エテルナで写真を撮ると、寂しげなイメージの写真に仕上がりになります。
彩度が低いと『悲しい』『寂しい』『冷たい』雰囲気になります。
夏の終わりを感じさせるような、鮮やかだったものが淡くなっていくような心情の変化を表現できるような力がエテルナにはあるのかもしれません。
こちらの写真はくらい場所でISO感度を上げていたのでノイズが発生しています。
例えノイズが入ったとしても、表現の一部として成立するような絵作りが特徴です。
エテルナでご飯を撮ってみましたが、美味しそうには写りませんね笑
ただし、エテルナには冷たく感じさせる効果があるので、かき氷のような『涼』を感じさせる食べ物なら相性がいいかもしれません。
お次は都会的な街並みの作例です。
空の青がくすんだ色味になっていて、全体に馴染むような雰囲気です。
軟調のため雲がパキッとしないところもエテルナの味が出て良いですね。
昭和から続く商店街の街並みです。
映画用フィルムの色味がベースなので、ノスタルジックな被写体とは相性抜群。
エテルナを使えば懐かしい雰囲気を表現できます。
同じ理由でお寺や神社などの和の被写体とも相性が良いです。
古き良き佇まいを強調できる点にエテルナの良さがあります。
エテルナは茶系や金色の発色が非常に綺麗です。
渋い被写体の魅力を最大限に活かすならエテルナを使いましょう。
ここからの作例はカメラの画質設定を『グレインエフェクト強』『粒度大』『カラー+3』で設定しています。
彩度を上げたことで一気にデジタル画面で映えるようになりました。
エテルナのスチル版フィルムがあったらきっとこんな仕上がりでしょう。
これらの写真はフォクトレンダーのノクトンシリーズで撮影したものです。
クラシックなマニュアルレンズの光学設計のような収差のある描写が特徴です。
まるでオールドレンズのような柔らかい描写が特徴なのですが、エテルナにはこのようなレンズと非常に相性が良いです。
よりフィルム感のある描写を目指すのであれば、レンズ選びもこだわってみて下さい。
そんなエテルナにピッタシのノクトンレンズのレビューもよければご覧ください。
デジタル全盛の時代になり、『高画素』『高解像』『画面映えする画質』が主流の時代になりました。
そんな時代が長く続いているわけですが、一方であえて『インスタントカメラの写りすぎない写真』に回帰した流行もあります。
そんなどことなく昔っぽい、ノスタルジックな雰囲気をデジタルで気軽に撮れちゃうことがデジタル版エテルナの面白さ。
現代のコッテリとした写真に疲れた方はぜひエテルナのあっさり味でバランスを取ってみて下さい。
【まとめ】エテルナは心情を揺さぶる色再現
エテルナは心情を揺さぶる色再現です。
今回ご紹介したエテルナのまとめはこんな感じ。
- 映画用フィルムを再現した低彩度&最軟調
- スチルとは異なる映画表現の色味
- どんなシーンも映画的な情景に
映画用フィルムのメインはあくまでも映画そのもの。
表現の邪魔にならない色味とトーンを選んだ結果がエテルナであり、だからこそ他のスチル用フィルムシミュレーションにはない味があります。
あっさりしすぎて面白みを感じられない方もおられるかもしれません。
しかし、あっさりだからこそ表現できる引き算の美学がエテルナにはあるのです。
まるで映画のような、映像を通して心で感じるような写真が撮れるエテルナのご紹介でした。
FUJIFILMユーザー必見の本
この記事を書くにあたり、もっとも参考にしているのが「FUJIFILM 画質完全読本」です。
富士フイルムの画質に関する哲学や、各フィルムシミュレーションのことがよく分かる内容になっているので、富士フイルムファンには是非とも読んでいただきたい一冊です。
どういうわけか、ネットで富士フイルムの画質について記載された詳しい記事が見つかりません。筆者も公式ページを含めていろんなサイトをリサーチしましたが、もっとも濃い情報が載っていたのはこの本。
富士フイルムファンの人や富士フイルムのカメラが気になるって人はぜひ手に取ってみてください。
本の方にも富士フイルムの公式チャンネル「FUJIFILM X channel」も参考にしております。
ネット記事や本には載っていない開発者の生の声が聞けるチャンネルなのでぜひ時間のある時に見てみてください。(かなりマニアックな話が多いですが笑)
FUJIFILMに関するほかの記事
当ブログでは、今回のようにFUJIFILMのカメラに関する記事がたくさんございます。
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